かつての私は、人と手をつなぐことができなかった。
相手のことをどれだけ好きでも、だ。
だって、手をつないだら行動範囲が制限されるじゃないか!
行動範囲の半径=私の片腕+相手の片腕!
短い!短すぎるよ!
つまり、かつての私にとっては
自分の行動範囲>>>>>手をつなぐ喜び
だったのだ。
今の私は、最愛の人となら手をつなげる。
別に、私の行動範囲が小さくなったわけではない、と思う。
きっと、私も大人になったのだ。
相手のペースに合わせることが、以前よりできるようになったのだ。
自分一人の楽しみよりも、二人の幸せを大切にできるようになったのだ。
ときどき、昔のことを思い出す。
今よりも怖いものが少なくて、でも、そのわずかな対象を今よりもずっと恐れていた頃のことを。
失うことが怖くて、自分のことだけを大切に扱おうとして、結局なにも大切にできなかった頃のことを。
思い出すことで、自分の進歩を確認しようとしているのかもしれない。
こうやって文字に起こすのも、確認作業のうちなのかもしれない。