夕日を見なくなった。
数年前まで住んでいた実家の自室は南西向きだった。夕方になると、空の色が変わるのがわかってくる。まばゆい光が向きを変え、影を伸ばし、赤みを帯びてくる。紫陽花色になるか、赤とんぼの色になるか。
たまに「これは!」と感じる色がある。そんな時は部屋を出て、階段へ。いかにも昭和っぽい模様入りの窓ガラス越しに見える絞り染めのような空は、窓を開けると細やかな水彩画のようになる。
今住んでいる部屋は南向き。しかも道路に面しているので、レースカーテンは常に閉めている。空を見なくなった。意図的に見ようとしない限りは。
「見るもの」にも種類がある。
1 なんとなく生きているなかで見えるもの
2 ちょっとしたきっかけが与えられて見に行くもの
3 重い腰を上げてようやく見に行くもの
以前の私にとっての夕日は1だった。今は2を通り越して3になりつつある。
1の部分に、上質なもの、豊かなものがどれくらい含まれているか。何が上質かという議論はここではしないが、自分の納得できる風景の中で生きているか。
窓の外はどうだ?カーテンは?棚の中身は?テーブルの上は?床は清潔か?いつも見ている景色に納得できるか?
できない。
雑然とした部屋で、雑然とした思考で生きている。
変えたい。
変わりたい。
納得のいく生活がしたい。